建設業の財産的基礎

建設業の許可を取得する事は対外的に信用を得ることを意味します。このためその信用を担保するための要素の一つとして、一般建設業の新規申請では一定額(500万円)以上の財産の有無が審査されています。
特定建設業は一般建設業とは異なり、常にその財産基礎を維持していることが期待されています。それは、特定建設業許可を有する者が、発注者との間の請負契約で、元請業者として下請け業者保護のために特に重い義務を負う一方、技術者の適正配置などについて下請業者への指導を徹底することが求められているからです。また、特定建設業は建設業法第15条3項により、発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が8000万円以上のものを履行するに足りる財産的基礎を有する事とされています。

一般建設業

「500万円以上の財産はあるか」については書面で審査されます。次のいずれかを提出します。

 ①財産的基礎 「自己資本の額」が500万以上の場合、財務諸表により証明します。
 「自己資本の額」とは次の額を言います。
 法人の場合・・・・・・純資産額の合計
 個人の場合・・・・・・期首資本金、事業主勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除
            した額に負債の部に計上されている利益流保性の引当金、準備金の額を加た
            額。  

 ②金銭的基礎(資金調達能力)
  500万円以上の申請者名義の金融機関の残高証明書(定期・当座・普通預金などの合計額)
  上記のケースが一番多いと思われます
  500万円以上の申請者名義の所有不動産などの評価証明書
  500万円以上の申請者名義の金融機関の融資証明書など

 ③許可取得後5年間の営業実績
  許可を受けた後の「更新」では、許可を受けた後に不測の事態(倒産など)が生じることなく、か
  つ、必要な変更届を確実に提出して「5年間営業していた」ことが財産的基礎に代わって評価される
  ので、改めて財産的基礎の審査を受ける必要がありません。
(更新の場合は財産的基礎を証明する必要がありませんので、一度取得した建設業の許可は失効しない
 様にしっかりと更新の準備をしなければなりません。)

特定建設業

許可申請の直前決算において、次のすべての基準を満たしていることが求められます。(倒産することが明白である場合を除います)

 ①「欠損の額」が資本金の20%を超えていないこと
  「欠損の額」とは、次の額を言います。
  法人の場合・・・・・・貸借対象表のマイナスの繰越利益剰余金が、資本剰余金、利益準備金、そ
             の他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計額を上回る額
  個人の場合・・・・・・事業主損失が、事業主勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部
             に計上されている利益性留保の引当金、準備金を加え額を上回る額

 ②「流動比率」が75%以上であること
  「流動比率」とは、次の式の結果を百分率で表したものをいいます。
   流動資産÷流動負債

 ③「資本の額」が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること
  「資本の額」とは次の額を言います。
  株式会社・・・・・・・・・・・・払込資本金
  特例有限会社・・・・・・・・・・資本の総額
  合資会社・合名会社など・・・・・出資金額
  個人・・・・・・・・・・・・・・期首資本金

上記①~③の基準を満たしているかの判断は次により行います。
〈原則〉
 既存企業の場合・・・・・・・・申請時の直前の決算期における財務諸表
 新規設立企業の場合・・・・・・創業時における財務諸表
〈上記の財務諸表上で「資本金」の額に関する基準を満たさない場合〉・・・・・申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、この基準を満たしているものとして取扱う

財産的基礎は建設業の許可を一番初めに取得する際は大変ですが、一般建設業の場合は比較的更新のハードルは楽になります。特定建設業の場合は財務諸表上の証明が引き続き必要となりますので、その運営上の財務管理は重要となります。